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連続時間マルコフ連鎖とPMHF式の導出 改訂版 (6) |
PFH と PMHF の厳密量の差
前稿の (1061.8) により、PFH は区間 $[0,T]$ における危険事象発生回数の期待値を $T$ で割った量として定義されます。本稿では、同じ危険事象に対して PMHF 型の量を定義し、両者が厳密にはどこで異なるのかを整理します。結論を先に言えば、その差は区間内における 2 回目以降の危険事象の寄与です。
同じ危険事象に対して、その初回発生時刻を
$$ \sigma_\text{DF}:=\inf\{t\ge0\mid N_\text{DF}(t)\ge1\} \tag{1062.1} $$
と定義します。
このとき、
$$ \{\sigma_\text{DF}\le T\}=\{N_\text{DF}(T)\ge1\} \tag{1062.2} $$
が成り立ちます。したがって、同じ危険事象に対する PMHF 型の量は
$$ \mathrm{PMHF}^{\ast}(T):=\frac{1}{T}\Pr\{\sigma_\text{DF}\le T\} =\frac{1}{T}\Pr\{N_\text{DF}(T)\ge1\} \tag{1062.3} $$
と書けます。VSG を吸収集合として扱う PMHF は、この形の量に対応します。
一方、前稿の PFH 定義に現れる期待回数は
$$ E\{N_\text{DF}(T)\} =\sum_{n\ge1}n\,\Pr\{N_\text{DF}(T)=n\} \tag{1062.4} $$
です。
これに対して、初回到達確率は
$$ \Pr\{N_\text{DF}(T)\ge1\} =\sum_{n\ge1}\Pr\{N_\text{DF}(T)=n\} \tag{1062.5} $$
です。したがって両者の差は
$$ E\{N_\text{DF}(T)\}-\Pr\{N_\text{DF}(T)\ge1\} =\sum_{n\ge2}(n-1)\Pr\{N_\text{DF}(T)=n\} \tag{1062.6} $$
となります。
前稿の PFH 定義と (1062.3), (1062.6) より、
$$ \mathrm{PFH}(0,T)-\mathrm{PMHF}^{\ast}(T) =\frac{1}{T}\sum_{n\ge2}(n-1)\Pr\{N_\text{DF}(T)=n\} \tag{1062.7} $$
です。
この式が示しているのは、PFH と PMHF 型の量の厳密な差が、区間 $[0,T]$ における 2 回目以降の危険事象の寄与そのものである、ということです。修理系では危険事象発生後も修理復帰し得るため、この項は一般には消えません。
これに対して、寿命区間 $[0,T]$ において危険事象は高々 1 回しか起きないという希少事象近似を
$$ \Pr\{N_\text{DF}(T)\ge2\}\approx0 \tag{1062.8} $$
と置けば、
$$ E\{N_\text{DF}(T)\}\approx\Pr\{N_\text{DF}(T)\ge1\} \tag{1062.9} $$
となります。したがって、PFH と PMHF 型の量の差は 1 次では見えなくなります。
要するに、PFH と PMHF の違いは、厳密には繰返し発生を数える量と初回到達をみる量の違いです。しかし希少事象近似を寿命区間全体にまで拡張すると、その差は 2 回目以降の発生確率に押し込められ、1 次では見えなくなります。次稿では、1057〜1059 で用いた IF-SM 潜在状態モデルを PFH 側にも持ち込み、同じ一次近似の下でどのような式になるかを示します。