|
22 |
連続時間マルコフ連鎖とPMHF式の導出 改訂版 (9) |
PFH の $\sum\lambda$ 式はどの仮定から出るか
本稿では、その表示式の背後にある仮定を整理します。
前稿の結果を抽象化すると、PFH 側で、危険事象の直前にある潜在状態の時点不稼働確率を $U_\text{LAT}(t)$、そこから危険事象を生じさせる最後の危険故障率を $\lambda_\text{last}$、単独で危険事象を生じさせる SPF 寄与を $\lambda_\text{SPF}$ としたとき、
$$ \mathrm{PFH}(0,H)\approx\lambda_\text{SPF}+\frac{\lambda_\text{last}}{H}\int_0^H U_\text{LAT}(t)\,dt \tag{1065.1} $$
と書けます。
第1の仮定は、各サブシステムの内部時間依存を、あらかじめ 1 個の平均故障率に縮約していることです。すなわち、サブシステム $i$ に対して、危険事象への流入頻度を $w_i(t)$ とすると、その平均値
$$ \lambda_i:=\frac{1}{H}\int_0^H w_i(t)\,dt \tag{1065.2} $$
だけでサブシステムを代表させる、という仮定です。規格で「各サブシステムの $\lambda$ を計算して足し合わせる」と書かれているとき、まずこの縮約が暗黙に入っています。
第2の仮定は、サブシステム内部で潜在状態を経由する 2 次項を省略していることです。すなわち、(1065.1) の第2項
$$ \Delta_\text{2nd}(H):=\frac{\lambda_\text{last}}{H}\int_0^H U_\text{LAT}(t)\,dt \tag{1065.3} $$
に対して
$$ \Delta_\text{2nd}(H)\ll\lambda_\text{SPF} \tag{1065.4} $$
として、これを無視します。すると
$$ \mathrm{PFH}(0,H)\approx\lambda_\text{SPF} \tag{1065.5} $$
となります。
最後に、互いに独立な SPF 寄与が $m$ 個あり、それぞれの平均危険故障率を $\lambda_i$ とすると
$$ \lambda_\text{AVG}\approx\sum_{i=1}^{m}\lambda_i \tag{1065.6} $$
です。これが規格で見える $\sum\lambda$ 形です。ここでの加算そのものは、通常の独立レアイベント近似の範囲に属します。
このことは、1059 で得た PMHF の DPF 項
$$ \frac{1}{2}\lambda_\text{IF,DPF}\lambda_\text{SM}\bigl((1-K_\text{SM,DPF})T+K_\text{SM,DPF}\tau\bigr) \tag{1065.7} $$
と比較すると分かりやすくなります。前稿の PFH の 2 次項とこの DPF 項は、どちらも
「第1故障率 × 平均露出時間 × 第2故障率」
という同じ 2 次構造を持っています。したがって、規格を素直に読む限り PFH は SPF の和として理解されますが、状態モデルを復元すると PFH 側にも 2 次項は現れ、そこで初めて PMHF の DPF 項と同じ数理構造が見えてきます。